「とにかく自分でやってみる」から始まる可能性の模索~多店舗展開の歩み~
株式会社FS.shake
代表取締役 遠藤 勇太 様
「生きるための食事を楽しむものにする」を経営理念に掲げ、本格的な鶏料理をリーズナブルに提供する「大衆居酒屋とりいちず」や種類豊富なもんじゃと今治焼鳥が人気の「もんじゃ酒場だしや」などのブランドを展開する株式会社FS.shake。その舵を取るのは、2013年に会社を設立し、「100店舗100億円」の目標を掲げて積極的に店舗展開を進めてきた代表取締役の遠藤氏です。「とにかく自分でやってみよう」という行動力と挑戦心で業界を切り開いてきた遠藤氏の経営者としての考え方や多店舗展開の軌跡に迫ります。
会社概要
株式会社FS.shake 2013年設立。「大衆居酒屋とりいちず」をはじめ、「もんじゃ酒場だしや」、「月島もんじゃ 三日月」、「焼き小籠包 火鍋 飲飲酒場」などの飲食店舗を次々とオープン。2021年には「シーシャ&カフェバー C.STAND」をオープンし、同じくシーシャ業態である「煙間-エンマ」、「am」も展開。「生きるための食事を楽しむものにする」という経営理念のもと、街に喜ばれるお店を展開・プロデュースする。 |
プロフィール
代表取締役 遠藤 勇太 様
島根県出身。高校時代から飲食業でアルバイトを経験。20歳で上京し、調理専門学校に通いながら引き続き飲食店で勤務。29歳で独学により水炊きのレシピを開発し、水炊き鍋専門店「酉一途」を西新宿に開業。オープン当初から好調な売上を記録。
独学で水炊きのレシピを考案、とりいちず(酉一途)を新宿にオープン
—遠藤社長が飲食業界に携わるようになったのはいつ頃からですか?
高校時代からアルバイトで飲食業界に携わり20歳で上京しました。料理の専門学校に通うためですが、地元の島根ではなく東京にある服部栄養専門学校へ通いながら飲食店で働いていました。
卒業後は有名な割烹に就職するなど、紆余曲折を経て、 外食計画ホールディングス株式会社(当時は外食計画株式会社)へ転職。飲食の面白さを知ることができましたし、本当に自由にやらせてもらえたのが大きかったです。基本は自分で本などから学び、会得した技術を当時の料理長からアドバイスを受けるというような形で覚えていきました。これまで働いてきた中で一番長く、約5年半お世話になりました。
―10代から飲食業界で経験を重ね、20代最後の年に会社を設立されたのですね。
はい、2013年1月に株式会社FS.shakeを設立し、同じ年の3月に「とりいちず」1号店を西新宿にオープンしました。「とりいちず」は漢字で書くと「酉一途」。水炊きや焼き鳥をメインにした鳥料理の専門店ですが、水炊きのスープは独学で考案してお店の看板メニューにしました。
―1号店の「とりいちず-西新宿店」の売上は順調に推移したのですか?
西新宿の店舗は20坪・40席程度の規模で、2013年2月のオープン以来、4月から6月にかけて微増ながら売上は伸びていました。しかし、7月から9月にかけて、売上が横ばいの状態が続いてしまったのです。それが精神的にかなり厳しかったですね。もちろん、販促活動として食べログで集客につながるプランを掲載してみようかなど、PDCAサイクルを回して集客を図っていました。
―売上が横ばいになった後はどうなったのですか?
様々な手を打ってみましたが、売上は横ばいのままでした。それが10月になった途端、予約が少しずつ増えてきて、何か様子が違うぞと感じたのを覚えています。それから、10~11月にかけては週を追うごとに寒くなってくる。そのため、寒くなればなるほど売上も上がっていき、12月は初月の3倍以上になったのでひとまず安心しました。
そして、夏場の厳しい時期を乗り越え、会社設立の初年度はなんとか黒字化に成功しました。
100店舗100億円を目指した多店舗展開の軌跡
―2店舗目以降はどのように展開していったのかお聞かせください。
1号店を西新宿にオープンしてから約1年半後、2014年には2号店として横浜関内に新たに「とりいちず」をオープンしました。この店舗は西新宿とは異なり、60坪120席程度と3倍の広さがあります。オープン当初は非常に繁盛していましたが、コロナ禍の影響で2022年3月に閉店しました。
―やはり新型コロナウイルスが飲食店に与えた影響は大きいですよね。
そうですね、少なからず多くの飲食店にとってかなり辛い経験になったとは思います。厳しい状況の中でもなんとかやっていかなければいけないお店も多く、「とりいちず」も、今でも需要があるデリバリーに注力しました。また、「今、とりいちずができること。」として、街を元気にするために取り組んだ施策は多々あります。
―コロナ禍に新しい取り組みを行う中で、何か工夫した点はありますか?
デリバリーを開始するにあたり、特に重視したのは従業員の負担を増やさないことでした。例えば、デリバリー専用のメニューを新たに作るのではなく、既存のイートインメニューを専用容器に詰めるだけで対応できるようにしました。現場が疲弊しないよう配慮しながら運営することを心掛けたのです。コロナ禍では、新しいものを生み出すよりも、既存のサービスやメニューをより良くするために考えて実行する期間だったと思います。
―コロナ禍という苦しい時期も乗り越え、今があります。コーポレートサイトでも掲げている「100店舗100億円」の目標に向けて、どのような道を歩んでいるのでしょうか?
会社設立から約4年後の2017年7月には20店舗、2020年には50店舗、そして創業10周年となる2023年には70店舗以上を展開するに至りました。そして、2024年9月には100店舗に到達する予定です(取材当時7月時点で99店舗)。そのラスト1ピースになるのが、店舗流通ネットの名古屋支店とともに進めているTRUNK刈谷です。2024年9月には「とりいちず」がオープンする予定です。
―記念すべき100店舗目がTRUNK刈谷で大変光栄です。そもそも遠藤社長が多店舗展開を意識し始めたのはいつ頃ですか?
経営者として、多店舗展開を見据えていたからこそ、2店舗目を出店しました。多店舗展開を意識しなければ、2店舗目をオープンすることはなかったと思います。
―2024年6月には弊社の「TRUNK本厚木」にも「大衆居酒屋とりいちず」と「もんじゃ酒場だしや」を出店していただきましたが、評価をいただいてもよろしいですか?
率直に申し上げますと、厳しい評価にはなりますが、現状ではマイナス評価となります。6月7日のグランドオープン時点で、予想していたよりも入居率が低かったことは非常に残念でした。特に1階部分はビルの顔とも言える重要な場所で、そこがまだオープンしていない状態だと、ビル全体の存在感が薄れ、集客力にも影響を及ぼします。しかし、今後多様なテナントが入居することで、ビル全体が活気に満ち、より多くのお客様に愛される場所になることを期待しています。
―おっしゃる通りです。「大衆居酒屋とりいちず」や「もんじゃ酒場だしや」をはじめ、現在ご入居いただいているテナント様、そしてこれからご入居いただくテナント様にもご満足いただけるよう改善に努めてまいります。弊社の営業部門だけでなく、マーケティングを強化し全社一丸となって、ビル全体の魅力をさらに高めるために、素晴らしい空間づくりに取り組んでいきます。
あくなき挑戦心、経営者としての新たな市場を開拓する力
―100店舗の展開を進める中で、さまざまな業態のお店を手がけてこられましたが、業種や業態に特別なこだわりはあったのでしょうか?
特にこだわりはありませんが、飲食という基盤は大切にしながら展開してきました。2013年から展開している「とりいちず」は、水炊きや焼き鳥、唐揚げなどの高品質な鶏料理をリーズナブルな価格で提供しています。その結果、現在では全国に50店舗以上展開するに至っています。
「もんじゃ酒場 だしや」はもんじゃ焼きやお好み焼きをメインに提供する居酒屋です。もちろん酒場なのでお酒も提供していますが、池袋西口店では驚くことに、いつ訪れても女子高生のグループがよく見られます。学校や部活帰りにおしゃべりしながら気軽につまめるため、コスパを重視する女子高生にはぴったりかもしれません。これは新たな発見でした。
―もんじゃ焼きはお酒と一緒に食べてこそ…という勝手なイメージがあったので意外でした! また、貴社では飲食業にとどまらず、「シーシャバー」も経営されていると伺いました。
2021年7月に「シーシャ/カフェバー・C.STAND(シースタンド)新宿三丁目店」を最初にオープンし、約3年で「C.STAND」は23店舗まで増えました(2024年7月時点)。
―「C.STAND」オープンの3周年、おめでとうございます!シーシャバーの展開が非常に速いペースで進んでいますね。これまで飲食業態を中心に事業を展開されてきた中で、どのような理由からシーシャバーを始めることにしたのでしょうか?
シーシャバーは約5~6年前から人気が高まり始めましたが、2021年4月にはコロナ禍にもかかわらず、約80席を持つ大型シーシャバーがオープンするというニュースが報じられました。これを受けて「これは流行するに違いない」と考え、さっそく様々なシーシャバーを訪問しました。
その結果、多くの店舗が高単価でありながら、内装に特別なこだわりがないことに気づきました。そこで、外食業界で培った知見や経験を活かし、独自の運営を行えば成功するのではないかと考えました。こうして、2021年7月に「C.STAND(シースタンド)」がオープンしました。「C.STAND」の大きな特徴は、昔流行した”原価バー”のように、ドリンクをほぼ原価で提供する点です。このアプローチにより、シーシャバーと原価バーの良いところを組み合わせた、新たな価値を持つ店舗を実現しました。
―出店を決めてからわずか3ヶ月でオープンに至る行動力は、遠藤社長ならではの成果だと思います。ちなみに、「C.STAND」とは別に他のシーシャバーも展開されていますが、その理由は何でしょうか?
端的に言いますと、ターゲットを変えて営業したかったからです。例えば、「C.STAND(シースタンド)」では、カフェのようにリラックスできる空間を提供しながら、シーシャを低価格で楽しめる環境を整えています。一方で、他店と同じ価格帯(3,500~4,000円)で、より高級感のある空間を提供するためにオープンしたのが「煙間-enma-」です。ホテルのラウンジのようなラグジュアリーな雰囲気を演出することで、他店にない魅力を打ち出しています。このように、店舗ごとに明確なコンセプトとターゲット層を設定しています。
―2024年7月17日には新しいシーシャバー「am」がオープンしたそうですね。こちらのシーシャバーのコンセプトを伺ってもよろしいでしょうか?
「am」は歌舞伎町の中心地にオープンしました。最大の特徴は、都会の喧騒を忘れさせる緑に囲まれた空間でシーシャを楽しめることです。全32席の店内には、ジャングルや星空が広がり、心安らぐ時間を過ごせます。他のシーシャバーとは一味違った体験ができるので、ぜひ一度お試しください。
―同じ歌舞伎町の地に「シーシャ」と「ダーツ」の両方が同時に楽しめる空間もあると伺っております。
「シーシャ&バー C.STAND DARTS+(シースタンドダーツ)」は、シーシャ×ダーツ×バーが融合した新感覚なシーシャバーです。2024年6月のオープン以来、多くのお客様からご好評をいただいています。
―なぜ「シーシャ×ダーツ×バー」を展開しようと思いついたのですか?
ダーツバーに行った際の経験から着想を得ました。ダーツを待つ間って、少し手持ち無沙汰になることがありますよね? その時間にシーシャを楽しめたら、もっと充実した時間が過ごせるのでは…と思ったのが、このアイデアのきっかけです。
ダーツ業界で差別化を図るのは容易ではありませんが、私たちは内装に徹底的にこだわり、シーシャの提供に加えて、ドリンクを圧倒的な低価格で提供することで、他にはない革新的な業態を作り上げることができたと自信を持って言えます。
―ダーツ業界では、多様なターゲットやコンセプトに応じた店舗展開をされていますが、飲食業態についてはどうでしょうか?
飲食においても同様のアプローチで店舗展開を進めています。例えば、2024年7月新宿歌舞伎町にオープンした月島もんじゃ「三日月」は、既存店「だしや」とは異なるコンセプトで展開しました。「だしや」では全席をボックス席にし、半個室のようなプライベート空間を楽しめる工夫を施し、若年層から40代まで幅広い支持を得ています。一方で、「三日月」では高級感を重視し、店員がもんじゃを焼いて提供するサービスを取り入れています。そのため、メニューの価格設定もやや高めにし、顧客のニーズに合わせた差別化を図っています。
―最後に多店舗展開を目指すオーナー様へ遠藤社長からメッセージをいただけますでしょうか?
会社や店舗を成長させられるかどうかは、オーナーの「貪欲な気持ち」と「覚悟」にかかっていると感じています。私の場合、業績を伸ばすことに楽しさを見出し、そのために何をすべきかを常に考え、「とにかく自分でやってみる」の精神でこれまで行動してきました。店舗経営への情熱が行動に現れることで、結果は自然とついてくるものだと実感しています。成功への鍵は、楽しさを感じながらも、挑戦を続ける姿勢にあるのです。
「100店舗100億円」を目指して2013年から店舗展開を進めてきた株式会社FS.shake。目標達成が間近に迫る中、次なるステップとして売上300億円を掲げ、その達成に向けた挑戦が始まっています。このような成功に安住することなく、「とにかく自分でやってみる」精神で常に前進し続ける姿勢には大きな感銘を受けます。私たちも引き続き、魅力的な物件の紹介や他のサポートを通じて、貴社のさらなる飛躍に貢献できればと思います。新たなステージへ進むその瞬間を、心から楽しみにしています。