飲食店に欠かせない損益計算書とは?作り方や店舗経営に活用する方法を解説!

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飲食店経営者にとって、経営の課題を的確に把握し、改善の方針を見つけることは不可欠です。そのなかで、損益計算書は強力なツールとなります。損益計算書を通じて、利益の状態や費用の発生源を把握することで、経営状況における潜在的な問題に対処できるのです。

今回は、飲食店経営者が抱える具体的な課題に焦点を当て、損益計算書の作成方法や店舗経営における効果的な活用法について解説していきます。

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損益計算書とは?

損益計算書は、企業の収益、費用、利益を示す財務諸表のひとつです。Profit & Loss statement(P/L表)とも呼ばれ、ビジネスの構造を理解する上で不可欠なものです。損益計算書を読み解くことで、1年間の経営状況を把握し、お店がどれだけ収益を上げたかを確認できます。そのため、飲食店経営において重要な判断材料となります。

損益計算書の勘定科目

損益計算書には、「収益」「費用」「利益」に関する項目が含まれています。これらは勘定科目と呼ばれ、これらの数値を理解することで、企業がどのように収益を上げ、どれだけ費用がかかり、そしてどれだけ利益を得ているかが明らかになります。

損益計算書を作成する上で必須の知識である勘定科目の種類について、以下で確認していきましょう。

収益の項目

飲食店の収益を確認する際は、売上高や営業外収益、特別利益といった項目を細かく把握することが重要です。これにより、店舗運営の状況や本業・副業の成果、さらには一時的な収入の影響を総合的に把握し、経営の健全性を評価できます。

売上高

飲食店の売上高は、営業活動によって得られる収益の総額です。主に料理や飲み物の提供を通じて発生し、飲食店の経営を支える基幹的な収入源です。

営業外収益

本業である飲食提供以外から得られる収益で、利息や手数料などが該当します。例えば、設備投資により得られる利息や、他の収入源による利益が含まれます。特に、コロナ対策として提供された「持続化給付金」などの助成金も、営業外収益として「雑収入」の項目で計上され、経営安定に役立つ資金として取り扱われます。

特別利益

特別利益とは、通常の営業活動には関係しない、一時的な収益です。例えば、店舗の売却益や不要資産の売却による収入などがこれに該当します。特別利益は毎期発生するものではなく、一度きりの収益として認識されますが、経営全体にプラスの影響を与える可能性があるため、収益の項目においても重要視されます。

費用の項目

企業活動を支えるためには、さまざまな費用が発生します。ここでは、飲食店経営において注目すべき主要な費用について解説します。

売上原価

飲食店で料理や飲み物を提供するために必要な材料費や仕入れ費など、提供に直接かかる原価を指します。これは「売上原価」として計上され、売上に対する利益の重要な指標です。

販売費・一般管理費

飲食店を営業するために必要な人件費や家賃、光熱費、さらには減価償却費などの一般的な諸経費を含みます。また、新規開業時にかかる初期費用もこの項目に含まれることが多く、経営上の負担要素となります。

営業外費用

営業活動に直接関わらない費用で、支払金利や資産売却による損失、固定資産税などが該当します。こうした費用は、収益に直接結びつかないため、しっかり管理することが求められます。

特別損失

通常の営業からは発生しない一時的な費用のことです。自然災害に伴う改修工事や、設備の急な故障など、予期しにくい支出が含まれます。

法人税、住民税、事業税

利益に基づいて支払う法人税、地域社会に支払う住民税、業務活動に課される事業税などの各種税金が費用に含まれます。税負担は企業の収支に大きく影響するため、適切な管理が不可欠です。

利益の項目

利益項目は、飲食業における事業の収益性や経営効率を測るための重要な指標です。それぞれの利益項目は、収入から各段階の費用を差し引いたもので構成され、経営の健全性や成長性を具体的に把握できます。ここでは、飲食事業において特に重要な利益項目について説明します。

売上総利益【売上高-売上原価】

「売上総利益」は「粗利」とも呼ばれ、売上から仕入れや原材料などの売上原価を差し引いた、事業の基本的な利益です。飲食店の場合、食材やドリンクなどの直接的なコストを差し引いた利益で、効率的な仕入れや原価管理の状態が反映されます。

営業利益【売上総利益-販売費・一般管理費】

営業利益は、売上総利益(粗利)から販売費(人件費など)と一般管理費(家賃や光熱費など)を引いたものです。飲食業において、本業の収益力や経営の効率性を図る指標として重要です。飲食店の目安は5%前後と言われています。

経常利益【営業利益+営業外収益-営業外費用】

営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いたものが経常利益です。本業に加えて、利息収入や投資収益などの本業以外の利益も含まれるため、企業の総合的な収益力を示します。飲食店では、資産管理や追加の収入源がプラスになる場合にこの項目が増えます。

税引前当期純利益【経常利益+特別利益-特別損失】

経常利益に一時的な収入や損失を調整したものが税引前当期純利益です。飲食店の設備売却や自然災害による改修など、通常の営業活動では発生しない特別な収益や損失が反映され、財務面での大きな変動を見極めることができます。

当期純利益【経常利益-法人税、住民税、事業税】

税引前当期純利益から法人税、住民税、事業税などの税金を差し引いたものが「当期純利益」です。最終的な黒字か赤字かがこの数値でわかり、事業の総合的な成績や、利益還元の可能性を示します。

飲食店における原価率について詳しく解説しているこちらの記事も参考にしてみてください。

損益計算書の書き方

PCの前で男性がノートに何かを書いている写真

損益計算書は、勘定科目を表の上から順に記入して作成されます。記入する勘定科目の順番は以下の通りです。

損益計算書の記入する項目の表

損益計算書を作成する際は、各勘定科目に関して詳細な内訳も記入する必要があります。例えば、「販売費・一般管理費」には、賃料、従業員給与、消耗品費などの具体的な経費が含まれるため、それぞれの項目を明確に分けて記録しておくと良いでしょう。

正確な損益計算書を作成するためには、日々の売上や仕入れ、その他の費用についてのデータを台帳にこまめに記録することが大切です。損益計算書は基本的に足し引きの計算が主体で、特別な技術は必要ありませんが、正確に作成するためには記帳の習慣を身につけることが求められます。

損益計算書の記入時には「仕訳」が必要で、これは項目を借方(左側)と貸方(右側)に分けて記載する手法です。「費用」は借方に分類して左側に、「収益」は貸方に分類して右側に記入し、最終的な「利益」は貸方に計上します。貸借対照表と似たルールに従っていますが、損益計算書の場合、「収益となる項目を右側に、支出した項目を左側に書く」と覚えるとわかりやすいでしょう。

損益計算書と貸借対照表の書き方の違い
▲損益計算書と貸借対照表の書き方の違い

飲食店経営に欠かせない損益計算書の重要性

飲食店経営において、損益計算書の内容とその作成方法を理解することは、経営者として不可欠です。損益計算書を含む財務諸表の理解は、店舗運営の健全な財務管理に直結し、経営判断の基盤となります。近年ではクラウド会計ソフトを導入することで、効率的に財務諸表を作成できるようになっており、多忙な飲食店経営者にとって非常に有用です。

クラウド会計ソフトは、インターネット環境があればどこでも利用でき、パソコンやスマートフォンなどデバイスを問わずアクセス可能です。また、クレジットカードや電子決済などの取引を自動で仕訳処理する機能が備わっているため、手入力によるミスを防ぎ、業務の正確性と効率性を大幅に向上させます。

さらに、クラウド会計ソフトを活用することで、売上や費用、利益といった数値をリアルタイムで確認できるため、経営判断が迅速に行えるというメリットがあります。財務管理にとどまらず、給与計算、顧客管理、在庫管理、売上分析なども一元管理できるため、業務のデジタル化が進み、経営の効率化とコスト削減を同時に実現できます。

このように、クラウド会計ソフトの導入は、経営の見える化や経営課題の早期発見にもつながるため、飲食店経営をさらに円滑に進めたい方はぜひ導入を検討してみてください。デジタルツールを活用することで、経営者自身の負担も軽減され、より戦略的な経営に集中できる環境を整えられるでしょう。

損益計算書を適切に活用することで、売上増加に向けた施策の検討やコスト削減に関する意識が高まり、店舗の利益率向上に繋がります。

また、これから飲食店の出店を検討している方にとって、店舗開業時の負担軽減をサポートする「ショップサポートシステム」を導入することもおすすめです。

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