飲食店の人手不足の現状は? 採用を成功へ導くポイントや対策を紹介
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企業の労働力不足が深刻化していますが、なかでも飲食店に人が集まらないという声が多く聞かれます。以前に比べると高時給を提示する店も増えていますが、人手不足が解消できるほどの結果には至っていないのが現状です。
飲食店のサービスは対面で提供されることが多いため、人員不足は店舗運営に大きく影響します。ここでは、飲食業界の人手不足についての現状や傾向、人手不足の原因や改善策について解説します。
目次
飲食店の人手不足の現状
はじめに、飲食業界における人手不足の状況について解説します。
2023年7月時点における飲食店の現状
株式会社帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2023年7月)」によると、全国で正社員の人手不足割合は 51.4%、非正社員では 30.5%でした。非正社員の人手不足の割合を業種別で見ると「飲食店」が 83.5%ともっとも高く、飲食業界だけが8割を上回る結果となっています。
飲食店では雇用の7割以上が非正社員という特徴があり、人手不足による影響が懸念されます。
新型コロナウイルス感染症の拡大以前も、飲食業界の人手不足は他業種に比べて厳しい状況でした。コロナ禍以前の水準にすら回復しないまま、経済活動の活発化による求人数の増加とともに、人手不足がさらに深刻化しているのが実情です。
求人情報サービス「バイトル」を運営するディップ株式会社の「2023年5月度 アルバイト平均時給調査」によると、2023年5月のアルバイト・パートの平均時給は1,276円(前年比54円増、前月比40円増)で、「飲食業界の職業(アルバイト・パート)」では平均時給が1,090円でした。
近年、アルバイト賃金は増加傾向にあり、飲食関連でも過去最高額に達していますが、それでも人手が集まらないという声は多く聞かれます。
新型コロナウイルス感染症と人手不足の関係
先にも述べたように、もともと飲食業界は新型コロナウイルスが流行する以前から欠員率が高い傾向にありました。欠員率とは、正社員やパートなどの労働者数と、求人を出しても雇用できなかった人数の割合です。
さらに人手不足に追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルス感染症でした。経済産業省がまとめた「飲食関連産業の動向(2021年)」によると、コロナ禍のなかで行動制限、非接触が常態化し、飲食関連産業に関する活況度合いを示す指標は2年連続マイナスでした。飲食店の休業や閉店が相次ぎ、アルバイト、パート従業員の多くが離職や解雇を余儀なくされる状況が続いたのです。
2023年に行動制限が完全撤廃され社会が平常化すると、国内外の観光客、各種会合の機会が増加し、外食の需要が拡大しました。しかし、一度離れた人手の戻りは鈍く、現在も人手不足が続いています。
飲食業界で働く人が増えない一因として、新型コロナウイルス感染症のまん延を経験し、働く側も接触機会の多い仕事を避ける意識変化があると見られます。
飲食店が人手不足になる理由や原因
飲食店の人手不足の原因としては、以下のようなことが挙げられます。
労働条件が厳しい
飲食店は一般的な企業に比べて営業が長時間にわたることが多いため、労働時間が長引く傾向にあります。サービス業であることから、土日祝日に関係なく営業している場合も多く、従業員の勤務日もそれに合わせる必要があります。
さらに、シフト制のため、まとまった休みを取りづらく、家族と一緒に休日を過ごせないという悩みを抱える人もいるでしょう。
また、繫忙期と閑散期がある店では、残業が増えることもある一方で、季節によってシフトが減るケースも見られます。シフトの増減は収入に直結し、家計に影響を及ぼしかねません。
そして、新人教育に時間をかけられず、人員を採用しても定着しない、比較的長く勤めても時給は変わらず業務が増えるという問題も発生しがちです。多くの店では常に人手が足りず、人員に対しての業務量が多い傾向があります。
賃金の割安感
先に挙げた調査結果からもわかるように、労働環境が厳しいわりに飲食業界の時給は高いとは言えません。全国平均で見ても、全職種平均と200円弱の開きがあります。
飲食店ではアルバイト店員の流動性が高く、時給がアップする前に辞めてしまうことも時給が上がらない一因であると考えられます。
また、小規模の飲食店では、利益率の低さから人件費に大きな予算をかける余裕がなく、賃金の大幅な値上げが難しい状況が指摘されています。
同業者同士の価格競争に加えて、テイクアウトやアプリからメニューを注文できるフードデリバリーサービスも浸透しています。ますます店舗の経営環境が厳しくなるなかで、商品やサービスの価格を上げて従業員の賃金に還元させるということが難しい背景があるのです。
飲食店が人手不足を解消するための対策
飲食店が人手不足を解消するための具体的な対策について解説します。人手不足は採用で解決しようと考えがちですが、優秀な人材に長く働いてもらう対策も重要です。
定着率向上を意識する
新規人材募集への好ましい反応が期待できない状況下では、既存の従業員になるべく長く働いてもらう環境づくりが大切です。
従業員のモチベーションを高めるために時給設定の見直しをするか、福利厚生を充実させる、働きやすい勤務条件を提示するなどで、信頼感を高める方法もあります。インセンティブを設けることも、モチベーションが高くなり、やりがいに繋がるでしょう。
雇用者と従業員、従業員同士のコミュニケーション促進に努め、居心地の良い職場づくりを目指すことが大切です。
シフト管理の最適化
店舗営業の状態把握とともに、シフトスケジュールの効果的な管理に努めます。従業員の事情に極力配慮し、早めにシフト表を作成して、雇用者として可能な限り働きやすさを提供します。労働力の多様化に合わせて、短時間勤務を取り入れるのも一つの手段です。
トレーニングの提供とスキル向上のサポート
マニュアルの作成と実務トレーニングの組み合わせで、新人が早く仕事になじめる体制を整備します。トレーニングを各人に任せるのではなく、スキル向上を支援する機会を店側が勤務時間内に提供して、ケアの行き届いた職場であることをアピールします。
IT機器の活用
従業員の業務負担を軽減するために利用できるツールがないかを検討します。
オーダー受付、会計などを効率化するデジタルツールやシステムを導入することで、少人数でも業務をスムーズに回せる可能性があります。
ワークフローと作業導線の見直し
各担当者の動きを体系化し、無駄な作業や行動を排除していきます。業務上の気づきを反映できるよう、従業員の声に耳を傾けることが大切です。
必要に応じて、店内を従業員が動きやすいレイアウトに変更するといった、ハード面での見直しも考えます。
求人方法を見直す
求人に対する応募獲得に向けては、なるべく多くの応募者との接点を設定するのが有効です。
ハローワークやチラシ、オンライン求人ポータル、ソーシャルメディア、リファラル採用、人材紹介サービスなど、これまで利用していなかった方法も積極的に試します。人材獲得への可能性が広がるでしょう。
労働力の多様化
学生、主婦、シニア層、外国人など、年齢や経験、国籍、ライフスタイルなどにとらわれず、採用条件の枠を広げてみるのも効果的です。採用条件を拡大することで、それまで応募が叶わなかった有能な人材に巡り合える可能性があります。
また採用活動が上手くいかない場合、労働条件と採用したいターゲットでミスマッチが起きている可能性があります。その場合は採用ターゲットを変えてみたり、広げてみるといいでしょう。例えば、外国人材採用を検討することも有効です。
人手不足を解消するため外国人材採用が増加
実際に、人手不足の有効な解消方法として外国人材採用は増加の傾向にあります。2023年1月に厚生労働省が発表した『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)』によると、外国人労働者数は、182万2,725人となり過去最高を更新しています。「宿泊業、飲食サービス業」においては、全体の14.4%となっており、産業別外国人雇用事業所の割合では3番目に多い数となりました(その他は除く)。
このデータからも、飲食店の人手不足問題を解決する手段として、外国人就労者の雇用は今後ますます需要が高まることが予想されます。
飲食店の求人については、以下の記事で詳しく解説しています。
人手確保に向けて可能な限りの対策に着手しよう
多くの飲食店が人手不足に悩む今、人手獲得は店舗の生き残りをかけた課題ともなっています。安定的な店舗経営を実現するためには、自社ができるあらゆる方法を行う姿勢が必要です。
なかでも、求人枠の拡大は現実的で即効性のある手段といえるでしょう。自力での採用実施が難しい場合には、専門の人材サポートサービスの活用がおすすめです。
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