飲食店の健全経営のために必要不可欠な売上予算!売上予算の立て方と管理方法とは
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飲食店経営において、成功を収めるためには売上予算の適切な策定と管理が不可欠です。売上予算は単なる数字ではなく、店舗の健全な経営を支える鍵となります。そこで、売上予算をどのように設定し、その数字を上回るためにどのように戦略を練るかを明確にすることが、飲食店経営の成否を左右します。
売上予算で目標を設けることで、スタッフや経営者は共通の目標に向けて協力し、創意工夫や努力が生まれます。また、ライバル店との比較を通じて、自店の競争力を向上させる手段ともなります。
今回は、飲食店経営における売上予算の重要性と、その具体的な設定方法に焦点を当てて解説していきます。どのようにして目標数字を探り、その達成に向けて計画的に経営を進めるかを理解することで、売上向上と経営の健全性を実現できるでしょう。
目次
売上予算とは
売上予算とは、年間を通して達成可能と予測された売上高のことです。会社やお店にとっての経営目標と言い換えることもできます。売上予算は通常、これまでのお店の営業実績をベースに設定されます。こうであって欲しいという単なる予測や希望とは異なり、達成すべき指標として設けられる売上予算は実現可能な数字であることが重要です。
売上予算は一般的に年間の数値を指しますが、店舗経営では月間売上予算や週間売上予算が用いられることも多く、その場合は、予算の大元である年間売上予算から算出します。
売上予算を立てる重要性
飲食店経営には、しっかりとした数字の管理が欠かせません。数字の管理がなければ、お店が現在どんな状態なのか、今後どのように進んでいけば良いのかが分からなくなってしまいます。
お店が管理すべき数字のひとつである売上予算は、お店の舵取りをする役目を果たします。経営者だけでなく従業員もこの数字を意識することで、会社全体としての目指すべき方向が明確に決まります。そのためにも、朝礼や会議などの際に当月の売上予算の進捗状況や達成率を社員やアルバイトに共有すると良いでしょう。共有する売上予算は、月単位よりも1日単位まで細かくした方がより身近な目標数字として感じやすくなるので、おすすめです。
また、売上予算を管理することは業務内容の改善にも役立ちます。売上予算を達成できたときは経営が上手く行っていることを意味しますが、達成できなかった場合は何らかの業務改善が必要なことを意味します。
このように、売上予算の達成率から業務内容を振り返り、商品やサービス提供の継続、または手直しを判断することが可能になります。
飲食店の売上を考えるうえで重要な項目や指標もまとめていますので、こちらの記事も参考にしてみてください。
売上予算の立て方
売上予算を立てる際、経営の実態とかけ離れた予算を設定してしまうと、予算達成のためのモチベーションが低下してしまいます。そんな事態を招かないためにも、飲食店経営者向けの適切な売上予算を算出するプロセスについてご紹介していきます。
利益予算を決める
利益予算とは、1年を通じて達成すべき利益の金額のことです。会社経営の目的は利益を生み出すことなので、まずは根本となる利益、すなわち儲けをどれだけ得たいのかを算出しましょう。
利益予算は、前年度の対比に加えて、現状の事業の規模や人材、資産状況を踏まえて算出されます。そのため、経営計画や事業内容をしっかりと確認することが非常に重要です。新店舗の場合は比較する前年の数字がないため、まずはどれだけの利益を獲得したいのかをベースに予算を設定し、その後は前日比、前月比など身近な数字と比べて少しずつ予算を修正していくと良いでしょう。
なお、会社の成長のためには前年を超える利益予算の設定が欠かせません。実現可能な数字であるとともに、どの程度の成長を遂げたいのかも考えながら利益予算を設定しましょう。
売上予算を作成する
利益予算が決まったら、年間の売上予測を立てましょう。売上予算は、利益予算をベースに作成します。作成方法は、損益計算書の作成を逆に進めるイメージを持つと作りやすいでしょう。
損益計算書は「売上がいくらで、費用がこのくらいかかったから、利益がこれだけ残った」という順番で作成されています。売上予算の作成の場合はこの逆で、「利益がこれだけ欲しいから、費用はこのくらいに抑えて、売上をこれだけ上げる」というように考えていきましょう。
具体的には、すでに決まっている利益予算を生み出すためにかかる費用や、必要になる売上高を計算していきます。まずは、人件費や家賃などの費用が前年と比較してどのように変わるかを考えましょう。費用が決まれば後は難しい考え方は必要なく、費用と利益の合計金額が売上高、すなわち売上予算になります。
なお、この利益予算をベースに作成した売上予算は、数字のみに基づいた合理性の高いものです。そのため、予算の数値が現場で働く従業員の意識から離れてしまうこともあります。
多くの場合、実際に現場で働いているのは従業員です。あまりにも厳しい目標を課せられると、従業員のモチベーションは下がってしまいます。お店の状況や社会情勢にも大きく左右されますが、一般的に売上予算は前年比3~10%増程度で設定されることが多いです。ただ、現場には現場なりの意見がありますので、経営者と従業員の話し合いをした上で売上予算を設定しましょう。
売上予算を細分化していく
売上予算が決まったら、その数字をさらに細かく分解していきましょう。売上予算は年間の目標数字として使われますが、その達成のためには小さな規模の目標の設定が欠かせないのです。
具体的には、まずは売上予算を月ごとに分割した月間売上予算を作成しましょう。月間売上予算を作成することで、より短い期間での売上目標が生まれて、年間目標の達成率が分かりやすくなります。また、期間を短く区切ることで、数字の振り返りの期間が短くなるとともに、業務内容を改善する頻度が上がる効果もあります。
月間売上予算は単純に売上予算を12等分するのではなく、お店の繁忙期・閑散期に応じて数字を振り分けて作成しましょう。
一般的に飲食店は宴会需要の多い7月や12月は繁忙期、9月や2月が閑散期と言われています。ですが業態や立地、その年のトレンドによって客入りは大きく変わりますので、自分のお店をしっかりと分析することが重要です。
売上予算の管理方法
売上予算は、数値を設定して終わりではありません。きちんと数字を管理し、それを読み取って経営に活かすことが大事になってきます。ここでは忙しい飲食店でも手軽に売上予算を管理できる方法についてご紹介していきます。
Excel(エクセル)・スプレッドシート
Microsoft Excel(エクセル)やスプレッドシートは売上予算の管理に最適なツールと言えます。どちらも図表作成や自動計算機能があるので、日々の売上データを入力するだけで自動的に計算を行うことが可能です。
売上予算を管理する帳票のひな形を作成するのは手間かもしれませんが、一度作ってしまえば後の管理は非常に楽になります。自由に計算式を使うことができるので、さまざまな数字を管理できるのがエクセル・スプレッドシートのメリットと言えます。
利用料がかからないという点も嬉しいポイントです。コストをかけずに予算管理をしたいという方は、これら表計算ソフトを利用すると良いでしょう。
また、スプレッドシートとエクセルオンラインバージョンはクラウド管理が可能です。どちらのサービスもアカウントを作成すれば、誰でも無料で利用することができます。インターネット上で予算管理表を複数人で共有できるので、多店舗展開している経営者には特にメリットがあります。
CRM(顧客管理ツール)
CRM(Customer Relationship Management)ツールとは、顧客との関係性を高めるための支援ツールのことです。顧客満足度を高めて売上につなげるのがCRMツールの主な使い方です。
昨今では、さまざまなCRMツールが開発されています。飲食業界では「LINE公式アカウント」や「トレタ」など、クーポンやスタンプカード、予約台帳・レジなどと連携したものが多いです。
一般的なCRMツールは、初期費用で数万円、月額使用料で1万円以下で導入することができます。CRMは基本的に有料のツールですが、顧客管理や予約台帳、クーポン、スタンプカード、リピーターへのプッシュ通知で店舗への再訪を促す機能など、日常の業務を助け、顧客満足度を高めてくれる嬉しい機能が詰め込まれています。売上を含めた日々の運営の「見える化」を促進させる点がCRMを採用する大きなメリットと言えます。
上手く活用すれば、売上を飛躍的にアップさせる可能性を秘めているので、データ分析・デジタル管理をしっかりとやっていきたい飲食店経営者の方は、CRMツールの採用を選択肢の1つとして検討してみるのも良いでしょう。
適切な売上管理で健全な経営を目指しましょう
売上予算の作成は会社の方向性を左右する指標となります。また、売上予算を管理することは自店の経営状況を見直すための良い手掛かりにもなります。
これらを踏まえた上で、ご自身のお店に適した売上予算の管理方法を見つけ、あらゆるデータを駆使し、最適な予算を設定し、目標達成のために役立てていきましょう。