飲食店経営の大事な味方!金融機関との付き合い方、種類や特徴を徹底解説
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飲食店経営において、成功するためには資金面での戦略が不可欠です。新規開業や運転資金の確保、多店舗展開の計画において、金融機関との連携は避けて通れないパートナーシップとなります。しかしこの付き合い方、どのように進めればよいのでしょうか?
本記事では、飲食店経営における大きな取引先である金融機関との賢い付き合い方に焦点を当て、様々なシーンでの適切なアプローチを解説していきます。新規開業においてはどのようなポイントに注意すべきか、また、適切な運転資金の調達方法や多店舗展開に向けた資金調達のノウハウなど、実践的なヒントをお伝えします。
目次
「融資」と「借り入れ」の違いとは?
「融資」と「借り入れ」とは、どちらもお金を貸してもらうことには変わりありませんが、異なる呼び名で使い分けられています。
融資
融資とは、銀行などの金融機関から借りる「事業を営むため」のお金です。金融機関は個人や法人に対して、将来の返済を条件とし、事業のために必要となる資金を貸し出します。融資はその名の通り「資金を融通する」ことを意味するので、金融機関などのお金を貸す側が用いる用語になります。
借り入れ
借り入れとは、お金を借りた当事者の側が用いる用語です。また、狭義では事業のためではなく日常生活に使用する目的で借りるお金の意味合いがあります。借りたお金の使用目的が事業用である融資に対して、借り入れは生活のためにお金を借りる場合にも用います。
金融機関の種類と特徴
金融機関とひと口に言っても、その種類はさまざまです。それぞれにメリットとデメリットとがあるため、融資の金額や営業規模によって取引すべき金融機関は変わります。ここでは融資可能な金融機関の種類と、その特徴について解説していきます。
政府系金融機関
政府系金融機関とは、国が運営する金融機関です。公的金融機関と呼ばれることもあり、日本政策金融公庫や信用保証協会などがこれに該当します。小規模事業者への融資を積極的に行っており、初めてお店を開業する方のほとんどは日本政策金融公庫の融資を利用しています。
政府系金融機関の融資は、事業を促進する国営の金融機関だけあって、金利が低くなる傾向があり、返済期間に関しても運転資金7年、設備資金20年と長い点が大きな特徴です。融資の審査も通りやすいため、飲食店の新規開業の際には最適な金融機関と言えるでしょう。
その反面、政策金融公庫は支店数が少なく、融資や財務関係の相談が気軽にできないというデメリットもあります。事業内容のチェックが細部までおよぶため、融資申請の際に必要となる書類も多くなります。融資後のアフターフォローも弱いので、あくまで最初の開業時の融資先として活用するのがおすすめです。
協同組合金融機関
協同組合金融機関は、地域活性化を目的とした金融機関です。各地域にある「○○金庫」や「○○組合」などの名称の金融機関がこれにあたります。協同組合は非営利の組織ですので、地元の企業に対する融資には非常に前向きに対応してくれるのが特長です。地域密着型の金融機関である信用金庫や信用組合は、地元の情報に精通していたり支店数が多かったりと、財務に関するさまざまな相談に乗ってくれます。融資が終わった後のフォローも手厚く、飲食店経営の良き相談者となってくれるはずです。
協同組合金融機関のデメリットとしては、資金調達力が弱い点が挙げられます。他の機関と比較して融資限度額が少ない、金利が高く返済期限が短いなど、利用者には経済的な負担がかかります。それを踏まえても協同組合金融機関の地域密着型な融資は頼りになるので、多店舗展開を考える際には、協同組合金融機関に相談してみると良いでしょう。
もし地元から遠く離れた新しいエリアでの多店舗展開を考える場合には、その地域の金融機関とも付き合うことも検討してみてください。新天地での事業拡大のために大きな力となってくれるはずです。
普通金融機関
普通金融機関とは、都市銀行や地方銀行などのいわゆる銀行のことを指します。「○○銀行」のように、後ろに「銀行」とつく金融機関が普通金融機関にあたります。都市銀行はメガバンクとも呼ばれる超大手銀行で、ATMが多く利用者数も多いことから事業用通帳として使っている飲食店経営者は多いです。
しかし、都市銀行の主要取引先は大手上場企業なので、中小企業の融資は通りにくいというデメリットがあります。それに対して地方銀行は、中小企業を顧客とするケースが多いので融資の相談は積極的に対応してくれます。協同組合金融機関と同じく地方銀行も地域密着型の金融機関で、資金調達力に優れているところが利点です。
地方銀行は協同組合金融機関と比較すると、融資の条件面ではやや優れていますが、サービスの質は劣ってしまうこともあります。融資担当者の異動が頻繁に行われる場合が多いため、担当者と積極的にコミュニケーションを図り信頼関係を築いていくようにしましょう。
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複数の金融機関と付き合うべき理由
飲食店が取引する金融機関を特定の一行に絞ることはおすすめできません。
実際に長期間の店舗経営や多店舗展開に成功している飲食店オーナーは、複数の金融機関との取引を行っています。ここではなぜ飲食店が複数の金融機関と付き合うべきかの理由についてお話ししていきます。
相見積もりが取れる
複数の金融機関と付き合う最も大きなメリットは、相見積もりを受けることができる点です。金融機関同士を比較することによって、より良い条件の融資を受けられる確率が高まります。馴染みの金融機関との取引を続けることも大切ですが、高額になる融資は少しでも負担を減らしたいものです。金融機関を競争させて、少しでも金利や返済条件の良い融資を受けられるようにしましょう。
融資が降りなかったときの保険
付き合いのある金融機関が一行だけの場合、もしそこから融資が降りなかったときに資金繰りに行き詰まってしまう恐れがあります。そういったときのためにも、複数の金融機関との付き合いを保っておくと心強いです。
関係性がない状態で前触れもなく融資の相談をしても、金融機関の立場としては「いきなり相談に来たということは、この店は経営が厳しいのではないか・・・」と考えてしまいます。また、資金繰りに困ってから新たな金融機関を探すことは、非常に時間と手間がかかります。このような状況を回避するためにも、メインの金融機関の他にも付き合いがあったほうが賢明と言えるでしょう。
銀行の破綻リスクを回避する
ごく稀ですが、取引をしている金融機関が破綻してしまった場合には、融資が受けられなくなってしまいます。付き合いのある金融機関が一行であるなら、次に新規で金融機関と取引をするには審査に長い時間が必要になります。どんな事業も破綻するリスクがゼロということはありません。こういった万が一のリスクに備えられる点も、複数の金融機関と付き合うというメリットと言えます。
複数の金融機関と付き合う方法のコツとは
先に述べたように、多店舗展開など事業の拡大を目指す飲食店にとって、複数の金融機関との取引は欠かせません。付き合うべき金融機関は政府系金融機関が一行と、協同組合金融機関か普通金融機関が2行以上、といった付き合い方が理想的でしょう。
協同組合金融機関や普通金融機関との取引の始まりは、預金口座の開設がきっかけとなります。事業用の口座を開設する際には、金融機関の担当者と話をする機会が必ずあります。その際に融資の相談を担当者側から持ちかけてくることも少なくありません。銀行などのセールスマンには、融資先獲得のノルマが課せられています。彼らも飲食店と同じように、新規顧客を求めているのです。口座を開設して金融機関との接点を持っておけば、いざというときに取引先の金融機関は快く相談に乗ってくれるはずです。
また、知り合いからの紹介も新規の金融機関と取引を始める有効な手段です。誰しも友人や知人から紹介を受けた人物や案件なら、安心して取引できます。そのため、仲の良い同業者や顧問の税理士などに、融資について相談してみるのも良いでしょう。
ただ、金融機関との付き合いを広げることも重要ですが、実際に融資を受けるかどうかは、お店の経営実態に即して判断すべきです。関係を良くするために不要な融資を受けて、その返済によって資金繰りが圧迫されることになっては本末転倒です。サブで取引をする金融機関とは、適度な関係を保ちつつ、必要になった時に相談を持ち掛けるように注意しましょう。
まとめ
金融機関との付き合い方は、飲食店の資金運用に大きな影響を与えます。良い意味でも悪い意味でも、万が一に備えた資金調達先の確保は重要です。金融機関と上手に付き合いながら、安定した店舗の経営とさらなる事業の拡大を目指していきましょう。