店舗解体にはいくらかかる? 解体工事の種類や相場、金額を抑える方法

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店舗解体には閉店やリニューアル、契約満了などのさまざまな理由がありますが、悩みとなるのが解体にかかる費用です。店舗の解体費用は、どのような解体をしたいかによっても変わります。

また、契約によっては、解体工事についての細かな約束事項があるため、最終的にどの状態にすべきかを事前にしっかりと確認しておかなければいけません。ここでは、店舗解体の種類と費用相場、解体費用を抑えるための方法や注意点を解説します。

店舗解体工事の種類

店舗解体工事には主に以下の3種類があります。

内装解体

内装解体は、内部造作物にかかる工事で、床や天井は基本的には撤去しません。床や天井を残したまま、主に壁や仕切り、ドア、ガラス、カウンター、その他造作物を撤去します。

内装解体工事の範囲は一般的に定められておらず、入居者と物件所有者が話し合いながら決定するのが一般的です。基本的には、入居時の契約の際に詳細が決められているため、事前にどの状態で戻さなければいけないのかを確認しておく必要があります。

解体工事を始める際、物件の次の利用者が決まっている場合には、退去者が物件所有者に解体前にどこを残すかを確認して、工事業者に指示をして工事を進めます。

スケルトン解体

スケルトン解体は、内装だけでなく天井、床、配管、壁やタイルなどをすべて解体し、建物の構造躯体部分である梁(はり)や床だけを残す解体方法です。解体後の建物はコンクリート打ちっぱなしの状態になり、電気配線やエアコンも撤去されます。

スケルトン解体には、梁や床の劣化などを確認できるメリットがあり、大幅な改装が可能です。次の入居者は自由な内装を施せますが、撤去の範囲が広いため、入居できる状態にするための費用が高額になる傾向があります。

スケルトン物件や居抜き物件の違いにつていは以下の記事で詳しく解説しています。 

原状回復

原状回復は、店舗の解体工事のなかでもっとも一般的な解体方法です。入居した当初の状態に建物を戻す工事を指します。例えば、契約時にエアコンや換気扇が設置されていた場合には、それらを残して返却する必要があります。 

解体工事の範囲は賃貸借契約書に記載されており、基本的に契約内容に従った作業が求められます。工事範囲に認識の相違がないように、物件所有者と入念に話し合った上で、退去者が工事業者に指示を出すことが重要です。 

原状回復工事の場合、貸主と借主との間でトラブルが発生することがあります。例えば、退去日当日に立ち合いをした貸主からやり直しを求められる、原状回復範囲の認識相違があり、直前に工事範囲が広がるといったケースが考えられます。そうした事態を招かないためにも、事前に物件所有者と調整し工事内容を確認しましょう。 

なお、原状回復と原状復帰は同じ意味を持つ用語であり、使用される文脈によって使い分けられます。 

原状回復工事については以下の記事で詳しく解説しています。 

店舗解体工事の相場

電卓の上に一万円札が置かれた写真

店舗解体工事の相場は、種類にかかわらず店舗の広さによって異なります。坪数が大きいほど費用総額は高いですが、坪単価は低くなる傾向が見られます。

解体種類別の費用相場

全国平均での解体種類別の費用相場は以下が目安です。解体を行う事業者や地域によってもバラつきがあるため、事前にエリア平均を確認しておくと良いでしょう。 

  • 内装解体工事:1坪あたり1.5万円~4万円
  • スケルトン解体工事:1坪あたり3万円~5万円
  • 原状回復工事:1坪あたり1.5万円〜2.5万円

(※あくまで相場ですので、実際の費用感は業者にご確認ください)

例えば、東京都板橋区にある10坪の店舗を解体する場合では、内装解体工事は15万円~40万円、スケルトン解体工事ならば30万円~50万円、原状回復工事は15万円~25万円ほどかかるということです。

店舗解体工事で追加費用がかかるケース

店舗解体工事で追加費用がかかる主な要因について説明します。

重機が入りにくい

建物の周囲の状況によって、大型の解体用重機を設置するのが難しい場合、手作業メインで解体していかなければなりません。そのため、追加の人件費や工数、時間がかかる可能性があります。

アスベスト(石綿)が使用されている

アスベストは健康に害があるため、アスベストが使用されている建物の解体工事は専門の業者が取り扱う必要があります。アスベスト飛散対策、事前調査、各種手続き、近隣への周知など、アスベストの除去と廃棄に関連する費用が追加されます。 

アスベストが使用されている建物の解体工事については、厚生労働省の「令和5年度 改正石綿障害予防規則の周知広報事業」を確認してください。 

配管や内装が複雑

配管や内装が複雑な物件では、解体工程も難しく、解体に要する時間と労力が増加します。その場合は追加の人件費や解体作業の長期化が考えられます。

個室や仕切りが多い

個室や仕切りが多い物件では、構造物を取り外すための追加作業が必要となり、通常よりも時間と費用がかかります。

2階以上でエレベーターがない

解体対象の店舗が2階以上にあり、エレベーターがない場合、解体資材の搬入、搬出を人力で行う必要があります。手作業での材料の運搬に人的な労力と時間がかかり、追加費用が発生します。 

不用品が多い

不用品やゴミが店舗内に多く残っている場合、それらを処分するために運搬と廃棄にかかる費用が追加される可能性があります。

店舗解体の費用を抑える方法

店舗解体の費用を可能な限り抑える方法を紹介します。

物件所有者へ相談する

解体に先立ち、物件所有者へ確認をかねて交渉してみるのも一つの方法です。交渉次第では、より工数の少ない工事へ変わる可能性があります。 

例えば、スケルトン解体から、内装解体や軽度の原状復帰に変更できれば、工事費用を抑えられるでしょう。 

解体業者の相見積もりを行う

いきなり特定の事業者に依頼をするのではなく、複数の解体業者で相見積もりをします。費用の比較ができるだけでなく、業者の対応、工事明細が分かる見積もり内容を比較することで自分が信頼できる業者と巡り合う可能性が高まるでしょう。

不用品を自分で処分する

自分で処分できるものは極力自力で行うことで、廃棄にかかる費用を圧縮できます。解体業者に撤去してもらうと産業廃棄物となり、通常のごみ処理費用よりも高くなるので注意が必要です。自力で処分する際には、分解して一般ごみで処理したり、リサイクル業者に引き取ってもらったりするなどして適切に処理します。

造作譲渡を検討する

居抜きの状態で現在の借主から次の借主に譲渡すれば、内装や家具をそのまま引き渡せるため工事費用がかかりません。原状回復工事が不要となり、什器や備品の譲渡料を得られます。

飲食店の造作譲渡の詳細については、以下の記事で解説しています。

補助金・助成金の利用 

店舗解体にかかる自己負担を減らすために活用できる補助金や助成金もあります。例えば、「事業承継・引継ぎ補助金」は、後継者不在となり事業継続が困難になった事業者に対して、解体・処分費、原状回復費、移転・移設費用を補助する制度です。 

また、「事業再構築補助金」は、新分野展開や業態転換、事業・業種転換、事業再編など、再建を図る中小の事業者を対象としていて活用できる場合があります。

どの補助金や助成金が使えるのかは行政書士や弁護士、税理士などの専門家や店舗解体専門業者に相談したほうがよいでしょう。

店舗解体の注意点

店舗解体は、慎重な計画と実行が必要であり、法令を遵守して安全と環境に配慮して作業を進めることが重要です。店舗解体の際の主な注意点を解説します。

法規制と許可

解体工事は法規制に対応して行う必要があります。必要な許可を取得し、各自治体の建築規制や環境法規に従うことが重要です。 

周囲への配慮

解体による振動、騒音、粉じんなどが周囲に与える影響に配慮し、最小限に抑える対策を講じてトラブルを未然に防ぎます。

物件所有者との認識のすり合わせ

先にも伝えたように、認識の違いから思わぬトラブルとなることもあります。契約事項に従い、所有者と密なコミュニケーションを保つことで、トラブル回避につながります。工事の内容や範囲を詳細まで確認することが大切です。 

解体後の廃棄物処理

退去者の責任として、解体から生じる廃棄物の処理について、解体工事業者を確認しておく必要があります。適切な廃棄物処理施設やリサイクルプログラムを利用し、環境に配慮した方法で廃棄物を処理しましょう。

費用があまりにも安すぎる事業者に注意

解体費用が安すぎる事業者には注意が必要です。解体作業は違法投棄、不法労働など法律に触れる可能性もあります。上記の注意点に留意して解体を実施する業者を慎重に選定することが大切です。 

解体スケジュールを吟味する

退去期日から逆算し、いつごろまでに工事業者に依頼すればよいのかを検討します。一般的には、原状回復工事の依頼は退去予定日の2ヵ月前までにしておく必要があります。 

また、解体業者にも繁忙期(決算月が集中する2〜3月)と閑散期(6〜9月や12〜1月)があるため、対象となるエリアの状況を早めに確認しておくことが大切です。 

店舗解体は予算を抑えながら信頼できる業者に依頼しよう

店舗解体は種類や進め方によってかかる費用が変わります。自分でできることは自分で処理する、工数削減のための交渉をするなど、費用を抑える工夫をしましょう。その一方で、工事の実施は本当に信頼性できる業者に任せることが重要です。 

価格のみで選んでしまうと、周囲への配慮が不足したり、法令に違反したりするなどのトラブルを引き起こしかねません。 

店舗流通ネットでは、さまざまな種類の解体工事に経験豊富なプロが対応いたします。解体工事の事業者選びに悩んでいる場合には、ぜひご相談ください。

なお、解体を考える前に、別の撤退手段を検討するのもひとつの方法です。店舗流通ネットは居抜き店舗を直接買い取るため、本来撤退にかかるはずのコストを削減した退店を最速で実現します。 

賃貸借契約の解約予告と予告期間の賃料、内装造作設備の譲渡、原状回復工事といった解約にかかわる業務と費用を削減し、返還保証金と造作譲渡代金の取得までサポートします。 

選択肢の一つとして、ぜひご一考ください。

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